今の家(マンションや一戸建て)を売却して新しい住まいへ移る際、「どのタイミングで売り出せばよいのか」「住宅ローンが残っていても住み替えられるのか」と不安を感じる方は少なくありません。住み替えを成功させるためには、全体の流れを正しく把握し、無理のないスケジュールと精緻な資金計画を立てることが極めて重要です。本記事では、売り先行と買い先行の違い、住み替えローンや税金の特例の活用法など、スムーズな住み替えを実現するための具体的な手順とコツを分かりやすく解説します。
目次
家を売って住み替える際の全体的な流れとスケジュール
家を売って住み替える場合、検討を開始してから新居へ引っ越すまでの期間は、一般的に「6ヶ月から1年程度」が目安とされています。売却活動と購入活動を並行、あるいは前後して進める必要があるため、全体のスケジュール感をあらかじめ把握しておくことが成功への近道となります。
まずは現状の把握と資金計画から始めよう
住み替えを意識したら、すぐに物件探しを始めるのではなく、まずは「現状の把握」から着手しましょう。第一歩として行うべきは、現在の住宅ローンの残高確認です。金融機関から送付される残高証明書やインターネットバンキング等を利用し、いくら債務が残っているのかを正確に算出します。
次に、住み替えに充てられる手持ちの自己資金がいくらあるかを確認します。そのうえで、不動産情報サイトや査定シミュレーションなどを活用し、近隣エリアで似た条件の物件がいくらで取引されているか、自宅(マンション・一戸建て)の相場を調べてみましょう。「ローンの残債」「自己資金」「自宅の想定売却価格」の3要素が明確になることで、新居にかけられる予算を現実的に見積もることができます。
【シミュレーション】ローン残債2,000万円・自己資金500万円の場合
住み替えの資金イメージをつかむため、現在のローン残債が2,000万円、自己資金が500万円のケースで考えてみましょう。あくまで概算のイメージです。
| 項目 | 金額(例) |
| 自宅の想定売却価格 | 2,500万円 |
| 住宅ローン残債 | ▲2,000万円 |
| 売却諸費用(仲介手数料等)の目安 | ▲約100万円 |
| 売却で手元に残る額 | 約400万円 |
| 手元の自己資金と合算 | 約900万円(新居の頭金・諸費用に充当可能) |
このように、売却価格がローン残債を上回る「アンダーローン」であれば、売却で残った資金と自己資金を新居の頭金や諸費用に充てられます。逆に売却価格がローン残債を下回る場合は、後述する住み替えローンなどの検討が必要になります。まずは自分のケースが数字でどうなるかを把握することが、住み替え計画の出発点です。
不動産会社への査定依頼と媒介契約
相場の目安と資金計画に目処が立ったら、不動産会社へ自宅の査定を依頼します。この際、1社だけでなく複数の不動産会社に査定を依頼するのがポイントです。査定額の根拠を比較することで適正な市場価格を判断できるだけでなく、担当者の対応や提案力を見極めることができます。
信頼できる不動産会社が見つかったら、売却活動を正式に依頼するための「媒介契約」を締結します。媒介契約には、1社に限定して依頼する「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」と、複数社に依頼できる「一般媒介契約」の3種類があります。住み替えの場合は、売却活動の状況報告が義務付けられており、担当者と二人三脚で進めやすい「専任媒介契約」以上の形態を選ぶのが一般的です。
「売り先行」と「買い先行」の違いとメリット・デメリット
住み替えの手順には、現在の家を先に売却する「売り先行」と、新居を先に購入する「買い先行」の2つのパターンがあります。現在の資金状況や、住み替えにおいて何を優先するかによって、適した手法は異なります。まずは両者の違いを整理しましょう。
| 項目 | 売り先行 | 買い先行 |
| 進め方 | 今の家を売ってから新居を購入 | 新居を購入してから今の家を売却 |
| メリット | 売却額が確定し資金計画が立てやすい | じっくり新居を選べる/引越し1回 |
| デメリット | 仮住まいが必要になる場合がある | 二重ローンのリスク・潤沢な自己資金が必要 |
| 向いている人 | 資金面の堅実さを優先したい人 | 新居選びに妥協したくない人 |
資金計画が立てやすい「売り先行」
「売り先行」とは、現在の住まいの売却を完了させてから、新居の購入手続きを進める方法です。最大のメリットは、家がいくらで売れるかが確定するため、新居購入に向けた資金計画が立てやすい点にあります。売却代金を新居の頭金やローンの完済に確実に充当できるため、資金不足に陥るリスクが低く、堅実な住み替えが可能です。
一方のデメリットは、家が売れた後に新居がすぐに見つからない場合、一時的に賃貸物件などの「仮住まい」が必要になることです。仮住まいを利用すると、引越し費用が2回分かかるほか、敷金・礼金や家賃といった余分なコストが発生する点に注意が必要です。
新居選びに妥協しない「買い先行」
「買い先行」とは、現在の家の売却よりも先に、気に入った新居を購入する方法です。こちらのメリットは、売却の期限に縛られることなく、理想の物件が見つかるまでじっくりと時間をかけて新居を選べる点です。また、新居に引っ越した後に旧居を空き家の状態で売り出せるため、内見対応の手間が省け、購入希望者に清潔な印象を与えやすいという利点もあります。引越しも1回で済むため、仮住まいのコストはかかりません。
しかし、旧居の売却代金を新居の購入資金に充てられないため、潤沢な自己資金が求められます。旧居のローンが残っている場合は、新居のローンと合わせて一時的に「二重ローン」の状態になるリスクがあります。これを回避するために、旧居が売れるまでの資金を一時的に借りる「つなぎ融資」を利用する方法もありますが、金利が比較的高めに設定されていることが多く、慎重な検討が必要です。
住み替えにかかる諸費用と無理のない資金計画
住み替えでは、物件の売買価格以外にもさまざまな手数料や税金が発生します。これらの諸費用を失念していると資金不足を招く恐れがあるため、事前に正確に見積もっておきましょう。
売却時にかかる仲介手数料や譲渡所得税
今の家を売却する際には、主に以下の諸費用が必要です。
- 仲介手数料:不動産会社へ支払う成功報酬です。売買価格が400万円を超える場合、上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」となります。
- 印紙税:売買契約書に貼付する印紙代です。
- 抵当権抹消登記費用:ローン完済時に抵当権を外すための登録免許税と、司法書士への報酬(数万円程度)がかかります。
- 譲渡所得税:購入時より高く売れて利益(譲渡所得)が出た場合に課せられます。不動産の所有期間が5年を超えるか否かで税率が大きく変わります。
購入時にかかる諸経費と準備のポイント
新居を購入する際も、物件価格の5〜10%程度の現金が必要になると考えておきましょう。購入時の主な諸費用には、仲介手数料、所有権移転登記費用、不動産取得税などがあります。住宅ローンを利用する場合は、事務手数料や保証料、火災保険料なども加わります。
これらの諸費用は、原則として住宅ローン本体には組み込めず、現金での支払いを求められるケースが多々あります。自己資金のすべてを頭金に回すのではなく、売却・購入それぞれの諸経費分をしっかりと手元に残しておくことが、余裕のある資金計画のポイントです。
住宅ローンが残っている場合の対処法と住み替えローン
売却代金で完済し抵当権抹消を行う基本の手順
現在の住宅ローンが残っている場合、家の引き渡しまでにローンを完済し、金融機関が設定している「抵当権」を抹消しなければなりません。抵当権とは、ローンの返済が滞った際に金融機関が不動産を差し押さえる権利のことで、これが付いたままでは通常、売却は不可能です。
基本の手順としては、査定額がローン残債を上回る「アンダーローン」の状態であることを確認し、売却代金でローンを一括返済します。もし売却代金がわずかに届かない場合でも、自己資金を補填して完済できれば問題ありません。このように、確実な完済を目指すなら「売り先行」で進めるのが最も安全です。
自己資金で不足する場合は「住み替えローン」を検討
売却代金と自己資金を合わせてもローンを完済できない「オーバーローン」の状態でも、住み替えを諦める必要はありません。新居の購入資金と、現在のローン残債を合算して一本化できる「住み替えローン」を利用する選択肢があります。
ただし、住み替えローンは借入総額が膨らむため、審査基準が非常に厳しくなる傾向があります。年収や年齢、勤続年数などが精査されるため、早めに金融機関へ相談することが肝要です。また、住み替えローンを利用する場合、旧居の売却決済と新居の購入決済を同日に行う必要があるなど、スケジュール管理が非常にタイトになる点も覚悟しておかなければなりません。
知っておきたい税金の特例や控除の仕組み
住み替えでは、売却益・売却損のどちらが出るかによって使える特例が異なります。代表的な2つを押さえておきましょう。
売却益が出た場合に使える「3000万円特別控除」
家を売却して利益(譲渡益)が出た場合、一定の要件を満たせば「マイホームを売ったときの特例(3000万円特別控除)」を適用できます。これにより、所有期間を問わず譲渡所得から最大3000万円を差し引けるため、多くのケースで譲渡所得税を非課税にできます。
ただし注意点として、この特例を利用すると新居での「住宅ローン控除」が一定期間受けられなくなるというルールがあります。売却益にかかる税金を抑えるのと、新居でローン控除を受けるのと、どちらがトータルで有利になるかをシミュレーションしておくことが大切です。
売却損が出た場合の特例と住宅ローン控除との併用
逆に、売却価格が購入時の価格やローン残債を下回り、損失(譲渡損)が出た場合には、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が活用できます。これは、売却による損失をその年の他の所得(給与所得など)から差し引いて、所得税や住民税を軽減できる制度です。
この特例の最大のメリットは、新居の「住宅ローン控除」と併用できる点にあります。売却損による税負担の軽減と、購入後のローン控除による減税の両方を享受できるため、オーバーローンの住み替えにおいて非常に強力なサポートとなります。
※これらの特例の適用には、所有期間(譲渡した年の1月1日時点で5年超など)、新居の床面積、合計所得金額などの厳密な要件があります。詳細は国税庁のホームページを確認するか、管轄の税務署・税理士へご相談ください。
住み替えを成功させる不動産会社選びとタイミングのコツ
万が一に備える「買い取り保証」の活用
住み替えのスケジュールを確実に進めるための手段として、不動産会社の「買い取り保証」サービスの利用が有効です。これは、一定期間内に仲介で売却できなかった場合、あらかじめ決めた価格で不動産会社が直接買い取る契約です。買取価格は市場相場の7〜8割程度になるのが一般的ですが、いつまでに、いくらで売れるかが確定するため、資金計画が立てやすくなるという大きな安心感があります。
ただし、買取価格が住宅ローンの残債を下回り、かつ自己資金でも補填できないオーバーローンの場合は、買い取り保証を利用しても売却が難しくなることがあります。利用にあたっては、保証される買取価格でローンを完済できるかを必ず確認しておきましょう。
スケジュール調整を円滑に進めるためのポイント
引き渡しと入居のタイミングを最適化するコツとして、「引渡猶予(ひきわたしゆうよ)特約」の交渉があります。これは、売却代金を受け取って所有権を移転した後も、数日間は今の家に住み続けさせてもらう特約です。これが認められれば、売却代金を新居の支払いに充てた後、落ち着いて引越し作業ができるため、仮住まいを用意する必要がなくなります。買主との交渉が必要になるため、媒介契約時に不動産会社へ要望を伝えておきましょう。
まとめ
家を売って住み替えるには、資金計画の立案から売買のタイミング調整、税制の活用まで多岐にわたる準備が必要です。「売り先行」「買い先行」のどちらが自身に合っているかを見極めるためにも、まずは信頼できる不動産会社へ相談し、正確な査定額とローンの状況を把握することから始めてください。本記事で紹介した手順や特例を賢く利用し、ゆとりを持ったスケジュールで理想の住み替えを実現させましょう。なお、税金やローンに関する個別の判断については、国税庁などの公的機関や税理士・金融機関へ確認したうえで進めることをおすすめします。

















































































































































